怖いクラゲをシミュレーションしてみました。
ウミガメに食べられるクラゲを、魚子とその友達は笑っていた。
「クラゲってさ、食べられる以外に能ないのかな?」魚子の友達であるAが言った。
「脊椎ないからエレメンタリー・バックストロークしかできないよね」魚子が微笑む。
「あいつらの繁殖方法って知ってる?」
「え?なになに?どうやって繁殖するの??」
Aのこの問いに、Bが勢いよく食いついた。魚だけに。
「Bくんって、そういうことしか頭にないんだね」魚子は箸が転がってもおかしいお年頃である。
「あ、それひどいよー魚子ちゃん」膨れるBをAがなだめた。
「まあとにかく聞けよ。この前俺が他の魚から聞いた話によるとさ、」
「あいつら、分裂して増えるんだって」
魚子もBも、一瞬Aが何を言っているのかわからないという様子で動きを止めた。
「・・・マジで?」Bの声が一瞬裏返った。
「嘘でしょ?いくらなんでもそんな生き物が生き残れるはずが・・・」魚子は理詰めで考えるタイプである。
「自分の遺伝子を他の良い遺伝子と交換しないなんて・・・」
しばらくして、魚子もBも、そしてAさえも笑い出した。
「クラゲって下等すぎる!!」
「じゃ、俺は群れに戻るから。魚子は?」
「あ、私ちょっと他に用事あるから。」
「あー、僕魚子ちゃんと一緒に帰りたかったけど、もうお腹ぺこぺこやわー。ごめんなあ。
バイバーイ、魚子ちゃん」
「うん、ばいばい」
こうして3匹は別々の場所へ泳いでいった。思えば、これが大きな間違いだったのだ。
魚子には急ぎの用事があった。だから物凄い速さで泳ぎ続けていた。何しろ競泳では5本の指に入るスイマーだったからだ。スイミーではない。しかし、彼女が現在抱えていた問題は、その持久力のなさだった。そこへ、ゆっくりと、しかし確実に近づいていく影があった。
最初、魚子は、何か細いものが自分をくすぐっているような気がした。魚子は振り向いて、
「なんですか一体!」と言いかけてはっと水を飲んだ。海だったから。
「魚子ちゃーん・・・こんばんは」
声の主は、さっきウミガメに食べられていたはずのクラゲだった。
「えっ!どうして!さっき食べられていたのは・・・」
「ふふふ」クラゲは幼子を見るような優しい目で微笑んだ。
「あれ、ビニール袋だよ」
魚子が気付いたときには、既に無数の触手が自分の周囲を取り囲んでいた。魚子は慌てて振りほどこうとしたが、クラゲの触手は自分に絡みつくばかりだった。さらにひどいことには、クラゲの触手にある刺胞が、彼女の体を麻痺させ始めていた。
「やっぱり脊椎動物って馬鹿だよね。がんばりすぎて自滅しちゃうんだから」
朦朧とする意識のなかで見たクラゲは、上からの光を透かしていて美しかった。こうして魚子は、自分よりも下等なはずのクラゲに捕食された。卵も産まないうちから。
その日の夜。奈良県の白石家の食卓。
「◎◎海の沖合いでクラゲが大量発生。地元の漁師は大きな痛手を負っています。こちら◎×市の漁協の代表、海野さんです」
「いやー、ほんとにえらいことになりよった。こげな量のクラゲ、みたこともねえでさ。」
「あれ、このマーボー春雨の中に入ってるコリコリしたのって、クラゲ?」
「それはきくらげ!!」
「クラゲってさ、食べられる以外に能ないのかな?」魚子の友達であるAが言った。
「脊椎ないからエレメンタリー・バックストロークしかできないよね」魚子が微笑む。
「あいつらの繁殖方法って知ってる?」
「え?なになに?どうやって繁殖するの??」
Aのこの問いに、Bが勢いよく食いついた。魚だけに。
「Bくんって、そういうことしか頭にないんだね」魚子は箸が転がってもおかしいお年頃である。
「あ、それひどいよー魚子ちゃん」膨れるBをAがなだめた。
「まあとにかく聞けよ。この前俺が他の魚から聞いた話によるとさ、」
「あいつら、分裂して増えるんだって」
魚子もBも、一瞬Aが何を言っているのかわからないという様子で動きを止めた。
「・・・マジで?」Bの声が一瞬裏返った。
「嘘でしょ?いくらなんでもそんな生き物が生き残れるはずが・・・」魚子は理詰めで考えるタイプである。
「自分の遺伝子を他の良い遺伝子と交換しないなんて・・・」
しばらくして、魚子もBも、そしてAさえも笑い出した。
「クラゲって下等すぎる!!」
「じゃ、俺は群れに戻るから。魚子は?」
「あ、私ちょっと他に用事あるから。」
「あー、僕魚子ちゃんと一緒に帰りたかったけど、もうお腹ぺこぺこやわー。ごめんなあ。
バイバーイ、魚子ちゃん」
「うん、ばいばい」
こうして3匹は別々の場所へ泳いでいった。思えば、これが大きな間違いだったのだ。
魚子には急ぎの用事があった。だから物凄い速さで泳ぎ続けていた。何しろ競泳では5本の指に入るスイマーだったからだ。スイミーではない。しかし、彼女が現在抱えていた問題は、その持久力のなさだった。そこへ、ゆっくりと、しかし確実に近づいていく影があった。
最初、魚子は、何か細いものが自分をくすぐっているような気がした。魚子は振り向いて、
「なんですか一体!」と言いかけてはっと水を飲んだ。海だったから。
「魚子ちゃーん・・・こんばんは」
声の主は、さっきウミガメに食べられていたはずのクラゲだった。
「えっ!どうして!さっき食べられていたのは・・・」
「ふふふ」クラゲは幼子を見るような優しい目で微笑んだ。
「あれ、ビニール袋だよ」
魚子が気付いたときには、既に無数の触手が自分の周囲を取り囲んでいた。魚子は慌てて振りほどこうとしたが、クラゲの触手は自分に絡みつくばかりだった。さらにひどいことには、クラゲの触手にある刺胞が、彼女の体を麻痺させ始めていた。
「やっぱり脊椎動物って馬鹿だよね。がんばりすぎて自滅しちゃうんだから」
朦朧とする意識のなかで見たクラゲは、上からの光を透かしていて美しかった。こうして魚子は、自分よりも下等なはずのクラゲに捕食された。卵も産まないうちから。
その日の夜。奈良県の白石家の食卓。
「◎◎海の沖合いでクラゲが大量発生。地元の漁師は大きな痛手を負っています。こちら◎×市の漁協の代表、海野さんです」
「いやー、ほんとにえらいことになりよった。こげな量のクラゲ、みたこともねえでさ。」
「あれ、このマーボー春雨の中に入ってるコリコリしたのって、クラゲ?」
「それはきくらげ!!」
原稿用紙
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